2026年11月3日の文化の日、東京大学の安田講堂で開催された「STOMA Néo-ART Symposium 2026」に参加してきました。
今回のシンポジウムのテーマは、「差異をほどき、社会を編みなおす―パリから東京、そして未来へ―」。
ストーマとともに生きる人たちの選択肢を広げるため、医療だけでなく、ファッション・文学・社会制度といった異なる分野の登壇者が集まり、身体の多様性や社会のあり方について考えるイベントです。
実は、この壮大なプロジェクトのリーダーを務めているのが、外科医として働くワタクシのいとこ。
2025年の大阪・関西万博で開催された「オムツ ファッションショー」に続き、2026年10月にはパリでオストメイトによるファッションショーを開催。そして今回は、東京大学の安田講堂を舞台にシンポジウムが行われました。
「知らない」ことによって狭められてしまう選択肢を、まず知ることから広げ、その可能性を支える社会の仕組みまで考える内容で、いろいろな気付きのある貴重な時間になりました。
STOMA Néo-ART Symposium 2026を東京大学安田講堂で開催
会場となったのは、東京大学本郷キャンパスの象徴ともいえる安田講堂。文化の日らしい青空の下、歴史と格式を感じる建物へ向かいます。

「STOMA Néo-ART Symposium 2026」は、13時から17時まで開催。一般席は無料の事前申込制で、定員は1,100名という大規模なシンポジウムです。
会場では手話通訳や文字通訳、車いす席、優先席、点字・テキストデータによる資料なども用意され、イベントの内容だけでなく、参加するための選択肢も幅広く考えられていました。

ストーマとオストメイトとは?
ストーマとは、病気や事故などをきっかけに、手術によって新たに造られる人工肛門や人工膀胱のこと。ストーマとともに生活する人は「オストメイト」と呼ばれ、国内には20万人以上いるとされています。
ただ、ストーマは衣服の下にあるため、外見からは分からないことも少なくありません。
「Not all Disabilities are visible(すべての障害が目に見えるわけではない)」という言葉が示すように、私たちが単に知らないだけで、同じ社会のなかには、それぞれ異なる事情や不便を抱えながら生活している人がいます。
今回のシンポジウムは、ストーマを医療や排泄ケアの問題だけに限定せず、オストメイトを一人の生活者として捉え、どのような選択肢があれば自分らしく生活できるのかを考えるイベントでした。

STOMA Néo-ART Project|パリから東京へ
シンポジウムの出発点となったのが、2026年10月6日にパリで開催されたオストメイトによるファッションショー「STOMA Néo-ART Project」です。
テーマは、「『隠すもの』から『魅せるアート』へ―Traditional Crafts meet Medical Fashion―」。
日本・フランス・イギリスから集まった10名のオストメイトモデルが、西陣織や京友禅、漆など日本の伝統工芸とストーマ装具を組み合わせた衣装を身にまとい、パリのランウェイを歩きました。
ストーマ装具を単に「隠すもの」として捉えるのではなく、見せること、装いの一部として楽しむことも含め、本人が自分らしいあり方を選択できるようにするプロジェクトです。

シンポジウムは3つのテーマで進行
会場へ入ると、安田講堂らしい重厚な内装と大きなスクリーンが印象的。プロジェクトの報告に続き、シンポジウムは大きく3つのテーマで進行しました。

Session 0|STOMA Néo-ART Project パリからの報告
最初は、デザイン&ショーを統括した平林景さんと、プロジェクトリーダーを務めるいとこの矢野雷太から、パリで開催されたファッションショーについての報告。
医療、ストーマ装具、ファッション、日本の伝統工芸という、一見すると離れているように思える分野を組み合わせ、パリから新しい価値観を発信するまでの挑戦が紹介されました。


Session 1|限られた選択肢と、「知らない」が生む障害
Session 1では、オストメイト本人、医師、看護師、作家、俳優など、それぞれ異なる立場から、ストーマを取り巻く現実や、社会が「知らない」ことで生まれる障害について語られました。
本人が本当に困っていることと、周囲が想像する困りごとは必ずしも一致しません。まず知ること、そして当事者の話を聞くことが、選択肢を広げるためのスタートになるのだと感じました。


Session 2|身体を拡張するファッションの可能性
Session 2では、医師・オストメイトモデル、ファッションに関わる実践者らが登壇し、身体とファッションの関係について議論されました。
装具は必要な機能を満たすだけでなく、本人が身につけたいデザインを選び、自分らしさを表現するものにもなり得ます。
「隠すか、見せるか」のどちらかを周囲が決めるのではなく、本人がその日の気持ちや場面に合わせて選べること。その選択肢をファッションの力で増やせる可能性が感じられるセッションでした。
Session 3|選択肢を支える社会のしくみ
最後のSession 3では、医療やファッションだけでなく、トイレ、行政、教育、社会制度といった視点から、広がった選択肢を実際の生活のなかで支える仕組みについて議論されました。
真面目なテーマでありながら、格式ある安田講堂で「うんこサイコー」や「うんこの話は酒のツマミになる」といった言葉が飛び出して、会場が盛り上がる場面も。感動的なエピソードもあり、堅苦しさを感じることなく、個人的にもかなり楽しめました♪
「知る」ことで終わらず、そこから生まれた可能性を、誰もが利用できる現実的な選択肢として支えていく。3つのセッションを通して、そんな一連の流れが見える構成になっていました。
大阪万博からパリ、そして東京大学安田講堂へ
いとこの挑戦を初めて間近で見たのは、2025年の大阪・関西万博で開催された「オムツ ファッションショー」でした。
あのときも、一般的には隠すものと思われがちなオムツを、ファッションとして見せることで、固定観念をひっくり返すイベントになっていました。
そこから、オストメイトによるパリでのファッションショーを実現し、さらに東京大学安田講堂で、医療・ファッション・文学・社会の仕組みまで横断するシンポジウムを開催。
▶ 大阪・関西万博の「オムツ ファッションショー」に参加した記事はコチラ
まとめ|「知らない」を知ることから選択肢が広がる
東京大学安田講堂で開催された「STOMA Néo-ART Symposium 2026」に参加しました。
ストーマやオストメイトについて知らなかったことを知り、社会のなかにどのような選択肢が必要なのか、その選択肢を支えるために何ができるのかを考える貴重な機会になりました。
何かを隠したい人もいれば、見せたい人もいる。そのどちらかに決めるのではなく、本人が自分らしいあり方を選べることが大切なんだと思います。
2025年の大阪・関西万博、2026年のパリ、そして東京大学安田講堂へと、壮大で素晴らしい挑戦を続けているいとこですが、引き続きガンバッテ欲しいし、これからも応援しています。
いや、ワタクシもガンバリマス!
STOMA Néo-ART Symposium 2026
開催日:2026年11月3日(火・祝)
開催時間:13:00~17:00
会場:東京大学 大講堂(安田講堂)
東京大学公式イベントページ
STOMA Néo-ART Project公式サイト






